理想の物件を見つけても頭金を用意できなかったり、頭金なしで住宅ローンを組むことに不安を感じたりする人は多くいます。住宅ローンの頭金を貯めている間に物件価格が上がり、負担が増えるのではと焦ることもあります。
頭金なしで住宅ローンを組むと返済の総額が大きくなり、後悔する人も少なくありません。この記事では頭金なしで住宅ローンを組むメリットとデメリット、住宅購入前に確認すべきポイントを解説します。記事を読めば頭金なしの住宅ローンが自分に合った選択かどうかを判断できるようになります。
頭金なしでも住宅ローンは組めますが、返済で後悔しないためには無理のない借入額の把握と資産価値の高い物件選びが大切です。
頭金なしで住宅ローンを組むことは可能

頭金なしで住宅ローンを組めるかについて以下のポイントを理解しておきましょう。
- 住宅ローンの頭金を支払う意味と基本的な仕組み
- 住宅ローンの頭金の平均額と実態
住宅ローンの頭金を支払う意味と基本的な仕組み
住宅ローンの頭金とは物件の購入代金のうち自己資金で支払う部分を指します。頭金を多く支払うと住宅ローンの借入額が減り、毎月の返済負担や利息の総額を抑えられます。
住宅ローンの頭金の計算方法は「物件価格 − 住宅ローン借入額 = 頭金」です。4,000万円の物件に500万円の頭金を支払えば、住宅ローンの借入額は3,500万円です。
住宅ローンの頭金を準備していると金融機関の信用が高まり、返済能力があると判断されて審査が有利になります。住宅ローンの頭金を先に支払うことで担保割れ(※1)リスクも下げられます。契約時に支払う手付金は住宅ローンの頭金の一部に充てられますが、登記費用などの諸費用は別途準備が必要です。
※1 担保割れとは、住宅を売却した際に売却価格より住宅ローン残高が多くなる状態を指します。
住宅ローンの頭金の平均額と実態
住宅ローンの頭金の平均額は物件価格の1〜2割程度ですが、近年は「頭金なし」や1割未満で購入する人も増えています。かつて住宅ローンの頭金は物件価格の2割が目安とされていました。近年は低金利の影響で住宅ローンの頭金への考え方が変わりつつあります。
特に20〜30代は貯蓄期間が短いため、全年代の平均より少ない頭金で住宅を購入する傾向があります。住宅金融支援機構の2022年度「フラット35利用者調査」によると、物件ごとの頭金の平均額は以下のとおりです。
- 中古マンション:449万円(物件価格の約14.7%)
- 中古戸建:266万円(物件価格の約9.0%)
- 建売住宅:453万円(物件価格の約12.2%)
- 新築マンション:1,003万円(物件価格の約20.5%)
民間の調査によると、住宅を購入した人のうち最も多い層は「住宅ローンの頭金1割未満」で、全体の約3分の1を占めています。
頭金なしで住宅ローンを組むメリット

頭金なしで住宅ローンを組むと、以下のメリットがあります。
- 頭金を貯めなくてもすぐに理想の住まいが手に入る
- 手元資金を教育費や投資など別の目的に活用できる
- 住宅ローン控除などの税制優遇をフル活用しやすい
頭金を貯めなくてもすぐに理想の住まいが手に入る
住宅ローンを頭金なしで組めば、タイミングを逃さずに理想の住まいが手に入ります。数百万円の住宅ローンの頭金を貯めるには数年かかる場合もあり、貯めている間に住宅価格や金利が上昇するリスクもあります。
住宅ローンの頭金の準備に時間をかけすぎると、理想的な物件や有利な条件で契約する機会を逃すかもしれません。家賃は払い続けても資産になりませんが、住宅ローンを返済すると自分の資産になります。
頭金を貯めずに住宅ローンを組む方法は、現在賃貸暮らしで住宅購入を検討している人にとっても魅力的な手段です。
手元資金を教育費や投資など別の目的に活用できる

住宅ローンを頭金なしで組めば、手元に資金を残せます。家を買う時期は結婚や出産などのライフイベントと重なりがちです。住宅ローンの頭金を支払わず資金を手元に残しておけば、将来の変化にも柔軟に対応できます。
手元に残した資金は以下のようなときに幅広く活用できます。
- 教育費
- 資産運用
- 生活防衛資金
- 自己投資
- 家具や家電の購入
資金に余裕を持つことで、人生のイベントや万一の事態にも備えやすくなる点が、住宅ローンを頭金なしで組む魅力です。
住宅ローン控除などの税制優遇をフル活用しやすい
頭金なしで住宅ローンを組むと、住宅ローン控除を有利に活用できます。住宅ローン控除は年末のローン残高を基準に金額が決まり、借入額が大きいほど税負担を軽減できます。手元資金を頭金にせず住宅ローンに回すと控除期間中の還付額が増えるため、総支払額を抑えられる仕組みです。
金利が低い状況であれば逆ザヤ(※2)が起こり、税制優遇の恩恵を受けやすくなります。住宅ローンの頭金を入れずに借入額を増やせば控除額が大きくなり、税金の還付や利息以上の還付につながります。住宅ローンの頭金をあえて入れない選択は、税制優遇制度を賢く利用する方法の一つです。
» 中古マンション購入時の住宅ローン控除の条件や手続きを解説!
※2 逆ザヤとは、住宅ローン控除による還付額が年間の支払利息を上回る状態を指します。
頭金なしで住宅ローンを組むデメリット

頭金なしで住宅ローンを組む場合、以下のデメリットがあります。
- 借入額が増え毎月の返済負担が大きくなる
- 金利が高めに設定されやすい
- 審査基準が厳しくなるケースがある
- 将来の売却時に担保割れリスクが高まる
- 選べる物件の選択肢が限られる可能性がある
借入額が増え毎月の返済負担が大きくなる
頭金なしで住宅ローンを組むと借入額が大きくなり、毎月の負担が増えて返済が滞るリスクが高まります。同じ金利や返済期間なら借入額が多いほど毎月の返済額は高くなり、総合的に支払う利息も増えます。
借入額の増加は家計を圧迫し、将来の教育費や老後資金といった長期的な資金計画にも影響を及ぼすため、慎重な判断が必要です。
金利が高めに設定されやすい

頭金なしで住宅ローンを組むと、金利が高めに設定される傾向があります。金融機関は返済リスクを考慮し、頭金がない申込者には金利を上乗せする場合があるためです。
住宅ローンの審査では融資率が重視されます。融資率とは物件価格に対してどの程度の割合を借りるかを示す数字です。多くの金融機関は融資率が9割を超えると金利を上乗せする仕組みを採用しています。
融資率が高い場合は頭金がある場合と比べて金利の優遇を受けにくくなるため、総返済額が増える点に注意してください。少しの金利差でも、数千万円を長期間で返済する住宅ローンでは総返済額が数十万から百万円以上増える場合があります。
審査基準が厳しくなるケースがある
頭金なしで住宅ローンを組む場合、以下の理由から金融機関の審査が厳しくなる場合があります。
| 理由 | 内容 |
| 返済負担が大きすぎる | 借入額が大きく、年収に対する返済比率が上限を超えやすくなる |
| 計画性が低いと判断される | 頭金を用意していないことで、貯蓄力や計画性が不足していると見なされる |
| 担保割れが起こりやすい | 物件価格の全額を借りると、購入直後から担保割れが発生するリスクがある |
| 状況を厳しく見られる | 勤続年数や他の借り入れ状況など、より厳しい審査を受けやすい |
金融機関は、頭金なしで住宅ローンを申込む人の返済力とリスクを多角的に評価します。
» 住宅ローンの事前審査でチェックされるポイントと通過するコツ
将来の売却時に担保割れリスクが高まる

頭金なしで住宅ローンを組むと住宅価格の全額を借り入れることになり、将来売却するときに担保割れのリスクが高まります。住宅価格の下落が住宅ローンの返済スピードを上回ると、住宅ローン残高が物件の価値を超えて担保割れが生じやすくなるためです。
担保割れになると家を売却しても住宅ローンを完済できず、不足分を現金で支払う必要があります。担保割れの状態では住み替えが難しく、住宅ローンの借り換えも制限されます。転勤や家族構成の変化で住み替えを検討しても、自己資金がなければ住宅を売却できません。
担保割れの状態では、有利な条件の住宅ローンに切り替えようとしても審査に通りにくくなります。
購入できる物件の選択肢が限られる可能性がある
金融機関は物件の価値を詳細に評価するため、購入希望者が選べるものは審査に通りやすい物件に限られます。頭金なしの住宅ローンは貸し倒れリスクが高いと判断され、担保価値が低い物件は承認されにくくなります。担保価値が低い物件とは、築年数が古いものや耐震基準や建築基準を満たさないものです。
金融機関によっては頭金なしの住宅ローンを扱わなかったり、金利を高く設定したりする場合もあります。住宅ローンの借入額の上限や金融機関の審査基準を理解しておくと、購入計画を現実的に立てやすくなります。
頭金なしで住宅ローンを組む前に確認すべきポイント

頭金なしで住宅ローンを組むときは、家計への影響を見据えて以下の点を確認しましょう。
- 年収と家計に合った無理のない借入額を把握する
- ライフプランを踏まえて返済シミュレーションを行う
- 諸費用や修繕費を別枠で準備しておく
- 収入減少など将来のリスクを想定して備える
- 資産価値が下がりにくい物件を選ぶ
年収と家計に合った無理のない借入額を把握する
年収と家計に合った借入額を考えるには、年収だけでなく家計の状況や将来の出費まで含めて総合的に判断する必要があります。住宅ローンは数十年にわたり返済が続くため、上限まで借りてしまうと予期せぬ出費や収入の変化で家計が苦しくなる恐れがあります。
無理のない借入額を考えるための指標は以下の2つです。
- 年収倍率
- 借入額の目安は年収の5〜7倍です。年収650万円なら3,250〜4,550万円程度が目安になります。
- 返済負担率
- 手取り年収に対する年間返済額の割合で、20〜25%以内に収めることが理想です。手取り月収40万円なら毎月8〜10万円が目安です。
年収倍率や返済負担率を考える際は、住宅ローン以外の返済や持ち家の維持費、ライフイベント、金利上昇リスクも考慮しましょう。無理のない借入額を決めるためには、家計簿をつけて現在の収支を把握しておくことも欠かせません。
» 年収に対する住宅ローンの目安は?無理のない返済のポイントを解説
ライフプランを踏まえて返済シミュレーションを行う

頭金なしで住宅ローンを組む際は今後の収入の変化も想定しましょう。ライフイベントに伴う費用や金利、返済期間による返済額の違いも返済シミュレーションで試算してください。
無理のない返済を続けるためには、教育費など支出が増える時期にも生活を維持できるかを確認することが大切です。返済シミュレーションに不安がある場合は、ファイナンシャルプランナーに確認してもらいましょう。
諸費用や修繕費を別枠で準備しておく
住宅ローンで借り入れる金額とは別に、諸費用や将来の修繕費を準備しておく必要があります。住宅購入には物件価格以外にも多くの費用がかかり、準備していないと資金繰りに困る恐れがあります。諸費用の目安は中古物件の場合は購入価格の6〜10%、新築住宅(建売・マンション)の場合は3〜7%です。
物件購入に必要な諸費用は以下のとおりです。
| 区分 | 内容 |
| 物件購入時に必ずかかる費用 | 仲介手数料、登記費用、住宅ローン保証料、火災保険料、リノベーション費用、家具・家電購入費、引っ越し代、不動産取得税 |
| マンション購入でかかる費用 | 管理費、修繕積立金 |
| 戸建て購入でかかる費用 | 外壁や屋根の修繕費用の積立、固定資産税 |
諸費用を住宅ローンに含められる場合もありますが、借入額が増えると返済負担が重くなります。
収入減少など将来のリスクを想定して備える

物件を購入する際は収入が減る可能性を想定して、生活費の半年〜1年分を住宅購入費用とは別に貯蓄しておきましょう。予期せぬ出費があっても住宅ローンの返済と生活を維持できるように備えるためです。
団体信用生命保険の保障内容を確認し、カバーできない医療費や生活費に備えるために必要に応じて民間保険も検討しましょう。夫婦でキャリアプランを話し合い、返済猶予制度について調べておくと将来のリスクに対応しやすくなります。
資産価値が下がりにくい物件を選ぶ
頭金なしで住宅ローンを組むときは資産価値が下がりにくい物件を選びましょう。住み替えが必要になったときに物件の価値が下がると、売却代金で住宅ローンを返せない恐れがあるためです。資産価値を維持しやすい物件は担保割れリスクに対する保険の役割を果たしてくれます。
物件の資産価値を見極める際は立地や周辺環境の将来性、建物の状態、間取り、環境、安全性を総合的に確認してください。
» マンション価格はいつ下がる?価格下落の兆候とタイミングを解説
頭金なしで住宅ローンを組む際によくある質問

頭金なしで住宅ローンを組む際によくある質問をまとめました。物件の購入を考えている人は参考にしてください。
どのくらいの年収があれば頭金なしで住宅ローンを組める?
頭金なしで住宅ローンを組む際、年収がいくら必要かの明確な基準はありません。金融機関は年収の額よりも、返済負担率を重視するためです。年収が高くても他に多くのローンがあれば住宅ローンの返済が難しいと見なされる場合があります。
住宅ローンの審査では勤務先の安定性や過去のローン返済履歴を示す信用情報も確認されます。一般的に年収400万円程度あれば住宅ローン審査の対象になりますが、頭金なしで希望額を借りるには安定した収入が必要です。
頭金なしで組んだ住宅ローンを売却するときの注意点は?
頭金なしで住宅ローンを組んだ場合、最も注意すべきことは担保割れのリスクです。頭金がないと物件価格のほぼ全額を借り入れるため、家の価値が下がると売却価格が残高を下回りやすくなります。住宅ローンを完済しないと金融機関の抵当権(※3)が外れず、家を売却できません。
担保割れになると、売却代金で返せない残高を自己資金で一括返済する必要があります。仲介手数料や登記費用などの売却にかかる諸費用も自己資金で準備しなければなりません。物件を購入してから売却までの期間が短いほど住宅ローン残高が多く残るため、担保割れのリスクは高まります。
※3 抵当権とは、住宅ローンを返済できなくなったときに金融機関が家を差し押さえて売却できる権利のことです。
住宅ローンは頭金なしでも組める!後悔しないためのポイントを押さえよう

頭金なしで住宅ローンを組む場合はメリットとデメリットを理解し、自分の状況に合わせて慎重に判断しましょう。頭金なしで住宅ローンを組むとすぐに住宅を購入できますが、返済負担が大きくなる点に注意が必要です。
理想の物件を手に入れるには将来を見据えた返済計画を立て、諸費用や修繕費を準備し、資産価値の維持を考慮することが大切です。


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