- 中古マンションの手付金の相場がわからない
- 手付金はいつ、いくら支払うべきか不安
- 中古マンションの手付金が返金されるケースを知りたい
初めて中古マンションを購入する際は、手付金の相場や手続きの進め方に戸惑う方が多いのが現状です。この記事では、中古マンションの手付金に関する基礎知識や相場、返金条件、支払いが困難な場合の対処法を解説します。記事を読めば、中古マンションを安心して購入するための判断材料が得られます。
手付金の基本を押さえて、家探しの不安を解消しましょう。
中古マンションの手付金の基礎知識

中古マンションにおける手付金の基礎知識は以下のとおりです。
- 手付金の役割と目的
- 手付金の上限
- 手付金の保全措置
手付金の役割と目的
手付金は中古マンションの売買契約の成立を保証する役割を担います。中古マンションの購入代金の前払いとしての性質もあるため、売買契約が履行された際は、手付金は売買代金の一部に充てられます。
中古マンションの手付金は、売主と買主の信頼関係を構築するうえでも不可欠です。買主が手付金を支払うことで、売主に安心感を与え、取引が円滑に進みます。手付金は、契約の安易な解除を防ぐ役割も果たします。
中古マンションの売買契約において、買主は手付金の放棄、売主は倍額の手付金を支払うことで契約の解除が可能です。
手付金の上限

宅建業者が売主の場合、買主保護のために、宅地建物取引業法で手付金は物件価格の20%までに制限されています。個人間での中古マンションの取引は手付金の法的な上限はありませんが、慣習的に20%程度が目安です。
中古マンションの手付金が高額すぎると、契約を破棄した際の損失が大きくなり、資金繰りが悪化するおそれがあります。住宅ローンに充てる頭金が不足する原因にもなります。中古マンションの手付金の金額は、売主と買主の合意があれば法定上限より低い設定も可能です。
高額物件では、中古マンションの価格に対する割合ではなく、具体的な金額で手付金の上限を定めるケースも見られます。中古マンションの手付金の上限は、物件の人気や地域の商慣習によっても変動します。
手付金の保全措置
手付金の保全措置とは、買主が支払った手付金を保護する制度です。中古マンションの売買で宅建業者が売主となる場合、法律によって手付金の保全措置が義務付けられています。中古マンションの売買における手付金の保全措置の種類は、以下のとおりです。
保全措置の種類 | 内容(説明) |
保証委託契約 | 保証会社が買主の手付金返還を保証する契約 |
保管委託契約 | 手付金を第三者(銀行や信託会社など)に保管してもらう契約 |
手付金等寄託制度 | 法務局に手付金を預ける国の制度 |
手付金の保全措置が適用されるのは、売買代金の5%を超え、かつ1,000万円以上の手付金を支払う場合です。手付金の保全措置は、所有権移転登記または物件の引き渡しまで有効です。手付金の保全措置の最大のメリットは、万が一売主が倒産しても手付金が返還される点にあります。
売主が個人の場合は、手付金の保全措置義務における法律はないので注意が必要です。
中古マンションの手付金の相場

中古マンションの手付金の相場を、以下の項目に分けて解説します。
- 一般的な相場
- 売主が宅建業者の場合の相場
- 売主が宅建業者以外の場合の相場
一般的な相場
中古マンションの売買契約で支払う手付金の相場は、購入価格の5〜10%程度です。3,000万円の中古マンションを購入する場合、手付金の目安は150〜300万円になります。地域によっても中古マンションの手付金の相場は異なり、首都圏では200〜300万円程度が多い傾向です。
地方都市では中古マンションの手付金の相場は比較的低く、100〜200万円程度です。高額物件になると手付金も高額になり、5,000万円以上の物件では500万円以上の手付金が必要になる場合もあります。
売主が宅建業者の場合の相場

宅建業者が売主の場合、宅地建物取引業法により手付金の上限は売買価格の20%までと明確に規制されています。実際の取引では、新築分譲マンションと同様に5%程度に設定される場合が多くあります。中古マンションでも5〜10%の範囲内で手付金が設定されることが一般的です。
売買価格が高額な物件では、割合ではなく具体的な金額として手付金が設定されるケースもあります。
売主が宅建業者以外の場合の相場
売主が宅建業者ではない場合、法律による上限規制がないため、状況によっては手付金が20%を超えるケースも見られます。物件価格が2,000~4,000万円程度の中古マンションを想定した場合は、100~200万円が手付金の目安です。
中古マンションにおける個人間での取引の特徴として、手付金の額や条件が、売主の経済状況によって変動する可能性があります。人気のある物件では、手付金が高額化する傾向にあります。宅建業者が介在しないため、手付金の金額や支払い条件について売主と直接交渉が可能です。
中古マンションの手付金の返金例

中古マンションを購入する際の手付金は、契約が破棄されても、必ず返却されるわけではありません。手付金の返金例を、以下の項目に分けて解説します。
- 手付金が返ってくるケース
- 手付金が返ってこないケース
手付金が返ってくるケース
中古マンションの手付金が返ってくる主なケースは、以下のとおりです。
- 手付解除権を行使した場合
- 買主が契約破棄なら手付金放棄、売主が契約破棄なら倍額返還となります。
- 売主に債務不履行がある場合
- 物件の瑕疵隠しや虚偽説明が発覚したときも返金対象です。
- 契約不適合責任が認められる場合
- 契約内容と実際の物件状態に重大な相違があるときが該当します。
- 契約時に「白紙特約」がある場合
- 住宅ローン特約など、条件未達成で無条件解除できる特約が対象です。
住宅ローン特約付き契約で融資が下りなかった場合や、クーリングオフ制度が適用される場合も返金されます。天災などの不可抗力により物件に重大な損害が生じた場合や、双方合意による契約解除の場合も、通常は手付金が返還されます。
手付金が返ってこないケース
売買契約が破棄された場合に、中古マンション購入時の手付金が返金されないケースがあります。中古マンションの購入における手付金が返金されない主なケースは、以下のとおりです。
- 買主による契約解除
- 買主の重大な契約違反
- 返金不可の条件の明記
- 融資特約なしでの住宅ローンの否決
- 買主の事情による一方的なキャンセル
- 事前説明済みの瑕疵を理由とする解約
- 損害賠償への合意
- 残代金支払期限の超過
中古マンションの手付金が払えないときの対処法

中古マンションの手付金を用意できなければ売買契約を締結できないため、以下の方法で対処しましょう。
- 手付金の減額交渉をする
- 親族や友人から資金を借りる
- フリーローンやカードローンを利用する
手付金の減額交渉をする
中古マンションの購入資金に余裕がない場合や、購入時の初期費用を抑えたい場合に、手付金の減額交渉は有効な方法となります。中古マンションの購入における手付金を減額するには、不動産仲介業者を通して交渉しましょう。
売主と直接交渉するよりも、プロである仲介業者を介する方が効果的に交渉できるためです。交渉術としては、手付金を減額する代わりに契約から決済までの期間を短くする提案が効果的です。手付金の減額が難しい場合は、分割払いの提案も検討してください。
親族や友人から資金を借りる

親族や友人から手付金の資金を借りる場合、金融機関からの借入と比較して、条件面での柔軟性が高い点がメリットです。しかし、親しい間柄だからこそ、資金を借りる際のルール作りが重要になります。親族や友人から、中古マンションの手付金を借りる際の注意点は以下のとおりです。
- 借用書を作成する
- 返済計画を明確化する
- 返済期間と方法を書面化する
- 適切な利息設定をする
注意すべき点として、親族からの借入は住宅ローン審査時に「負債」とみなされる可能性があります。
フリーローンやカードローンを利用する
フリーローンやカードローンを利用すれば、即日~数日で融資を受けられるため、手付金の支払い期限に間に合わせやすくなります。原則として担保や保証人を必要とせず、ローンの審査が迅速に行われるためです。
フリーローンやカードローンの借入可能額は、年収の約1/3程度が上限の目安となる点に注意しましょう。金利が住宅ローンと比べて高いため、フリーローンやカードローンは短期的な借入にとどめることが重要です。
中古マンション購入にかかる手付金以外の費用

中古マンションの購入時にかかる、手付金以外の費用は以下のとおりです。
- 仲介手数料
- 印紙税(不動産売買)
- 登録免許税・司法書士の報酬
- 火災保険料
仲介手数料
仲介手数料は不動産会社への報酬として支払う料金で、物件価格の3%+6万円+消費税が相場となります。中古マンションを購入する際には、売主側と買主側それぞれに仲介業者がつく「両手仲介」が一般的です。「片手仲介」(売主側のみ仲介業者がつく場合)では、仲介手数料が割引される場合もあります。
仲介手数料の支払いタイミングは、中古マンションの契約時と物件の引き渡し時の2回に分けられる場合が多くあります。仲介手数料は値引き交渉が可能な場合もありますが、サービスの質が低下する可能性もあるため注意しましょう。
» 中古マンションの仲介手数料を安くする方法
印紙税(不動産売買)
印紙税は、不動産売買契約書に収入印紙を貼って納付する税金で、中古マンション購入時に発生する費用の一つです。印紙税の金額は、不動産売買契約書に記載された取引金額によって決まります。一般的な中古マンションの購入にかかる印紙税は以下のとおりです。
契約金額(記載金額) | 印紙税額(軽減措置適用後) |
1,000万円超 5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超 1億円以下 | 3万円 |
売主と買主がそれぞれ不動産売買契約書を1通ずつ保有する場合、双方がそれぞれ印紙税を支払う必要があります。収入印紙は不動産売買の契約時に契約書に貼り付け、割印をする必要があります。
登録免許税・司法書士の報酬

登録免許税は、不動産の所有権を自分の名義に変更する際にかかる税金です。登録免許税は、中古マンションの固定資産税評価額をベースに計算されます。司法書士の報酬は、登記手続きを依頼する際の費用です。中古マンションの所有権移転登記は約3〜5万円、抵当権設定登記は約2〜3万円が一般的な相場です。
中古マンションを購入する際は、物件価格の約1〜2%程度を登記関連費用として見込んでおきましょう。
火災保険料
火災保険は中古マンションの購入時に必ず考慮すべき費用の一つです。中古マンションの購入で住宅ローンを利用する場合、ほとんどの金融機関から火災保険への加入を義務付けられます。火災保険料の金額は、建物の構造や築年数、保険金額、保険期間などの要素によって大きく変わります。
火災保険だけでは地震による損害は補償されないため、地震保険への加入も検討しましょう。地震保険は火災保険とセットで加入する必要があり、保険料は別途上乗せされます。
マンションの場合、通常、専有部分を対象とした火災保険への加入で対応可能です。火災保険の保険期間は1~10年まで選べるケースが多く、長期で契約すると保険料が割引されることがあります。
» マンションで火災保険が必要な3つの理由を解説
中古マンションの手付金に関するよくある質問

中古マンションの手付金に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 手付金と頭金の違いは?
- 住宅ローンを利用して手付金を支払える?
- 手付金を現金で用意する必要はある?
手付金と頭金の違いは?
中古マンションの手付金と頭金の違いは、以下のとおりです。
比較項目 | 手付金 | 頭金 |
主な目的・役割 | 売買契約成立の証として売主に支払う | 住宅ローンの借入額を減らすための自己資金の一部 |
契約解除時の扱い | 買主都合の場合、没収される可能性あり | 契約キャンセル時に没収されるリスクなし |
売買代金への充当 | 通常、最終的に売買代金の一部として充当される | 最初から住宅ローン以外の部分として計算される |
支払いのタイミング | 売買契約時に支払うのが一般的 | 物件の引き渡し時に支払うのが一般的 |
金額の上限 | 法律で上限が定められている場合がある(宅建業者が売主の場合など) | 特に法律上の制限なし |
住宅ローン審査での扱い | 金融機関から必須とはされないことが多い(任意の支払い) | 多くの金融機関で自己資金として一定額を求められることが多い |
手付金は売買契約成立の証としての役割があり、買主都合で契約解除する場合、没収される可能性があります。一方、頭金はローンの借入を減額するための資金であり、契約解除しても没収される心配はありません。
住宅ローンを利用して手付金を支払える?

住宅ローンを使って中古マンションの手付金を支払うことは、原則としてできません。住宅ローンの融資実行タイミングが物件引き渡し時であり、手付金の支払いタイミングよりも後になるためです。中古マンション購入時の手付金が足りない場合は、つなぎ融資を受ける方法があります。
つなぎ融資とは、本来の住宅ローンが実行されるまでの一時的なつなぎとして利用するローンです。つなぎ融資は通常の住宅ローンより金利が高く、別途手数料もかかります。
手付金を現金で用意する必要はある?
手付金は必ずしも現金で用意する必要はありません。中古マンションを購入する際の手付金の支払い方法は、銀行振込が一般的です。銀行振込を利用すると、取引記録が残るメリットがありますが、振込手数料が必要な点に注意しましょう。
中古マンションの手付金は現金でも支払えますが、高額な現金取引は犯罪収益移転防止法の観点から避けられる傾向があります。現金で手付金を支払う場合は、必ず領収書をもらってください。
まとめ

中古マンションを購入する際の手付金は、物件価格の5〜10%が一般的な相場です。手付金は契約の証として機能し、契約不履行時の保証金となります。宅建業者が中古マンションの売主の場合は、手付金の上限が20%になる点に注意しましょう。
中古マンションの購入時には手付金以外にも、仲介手数料や印紙税、登録免許税、火災保険料などの費用が必要になります。手付金は契約時に必要な前払い金、頭金は住宅ローン契約時の自己資金です。中古マンション購入を検討している方は、手付金の保全措置を確認し、契約内容を十分理解したうえで手続きを進めましょう。
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