「マイホームを手に入れたいけど新築を購入するだけの資金がない」と悩んでいませんか?近年マイホーム購入の選択肢として「中古物件とリノベーション」が注目されています。住宅価格の高騰が続いている都心部では、限られた予算で理想の住まいを手に入れられる中古リノベーションが人気です。
この記事ではリノベーションとリフォームの違いやメリット、デメリット、費用相場を解説します。記事を読めばリノベーションの全体像を把握でき、マイホーム計画に取り入れるかどうかの判断に役立てられます。
リノベーションは単なる修繕ではなく、住空間全体の価値を高める改修工事であることがリフォームとの違いです。リノベーションでは既存の構造を生かしつつ間取りやデザインを一新し、新築のような住み心地の実現が可能です。憧れのマイホームを低予算で手に入れられる、リノベーションの選択肢を検討しましょう。
リノベーションとは既存の建物に改修を加えて価値を高めること

リノベーションとは既存の建物に大規模な改修を施し、空間の価値や機能性を高めることです。既存の建物の骨組みを生かしながら内装を新しくし、リノベーションは現代のライフスタイルに合った住空間に生まれ変わらせます。リノベーションに含まれる内容は、間取りの変更や構造工事、耐震・断熱性能の向上などです。
中古物件の購入時にリノベーションを行えば、コストを抑えつつ理想のマイホームを手に入れられます。耐震補強や劣化部分の補修により建物の寿命を延ばし、中古物件でも長期的な居住計画が可能です。リノベーションを行えば建物に実際の築年数以上の外観や性能を付与でき、資産価値の向上も期待できます。
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リノベーションとリフォームの違い

リノベーションとリフォームの違いについて、以下の3点を解説します。
- 工事規模と内容の違い
- 目的とアプローチの違い
- 居住設備の性能と価値向上の違い
工事規模と内容の違い
リノベーションとリフォームは以下の表のように、工事の規模と内容に大きな違いがあります。
項目 | リノベーション | リフォーム |
工事の規模 | 大規模 | 小規模 |
具体的な工事の例 | 間取りの変更や構造的な工事 | 壁紙の張り替えや設備交換など |
工事の目的 | 空間全体の刷新 | 原状回復や機能維持 |
工事期間中の居住 | 全面的な工事になるため難しい | 部分的な工事のため居住も可能 |
工事の深度 | 躯体(構造体)以外を一度解体して再構築するケースが多い | 既存の枠組みを生かした改修 |
リノベーションでは給排水管や電気配線などのインフラを更新し、住まいの基礎的な性能が向上します。一方でリフォームは、既存の設備や内装を部分的に修繕・交換し、現状の機能を維持しながら住まいを整える手法です。
目的とアプローチの違い

リノベーションの目的は「住空間の価値向上」です。単なる修繕ではなく創造的で革新的なアプローチを取る点で、リノベーションとリフォームには違いがあります。リノベーションでは以下の点を重視します。
- ライフスタイルに合わせた空間づくり
- 長期的な資産価値の向上
- 住み手のアイデンティティや価値観の反映
- 省エネや環境配慮など現代的なニーズへの対応
リノベーションは住空間を再構築する取り組みである一方で、リフォームの主な目的は「修繕や更新」です。壊れた部分を直したり、古くなった設備を新しくしたりする現状維持的なアプローチがリフォームの特徴です。
将来の家族構成の変化を見据えた長期的な住まい作りには、リノベーションが適しています。比較的短期間での居住を想定している場合は、現状維持に重点を置くリフォームがおすすめです。
居住設備の性能と価値向上の違い
リノベーションは最新設備の導入や性能向上を積極的に行い、住宅全体の価値を高めることを目指しています。一方で、リフォームは既存設備の修繕や同等品への交換が中心であり、元の性能水準の維持に留まります。
リノベーションによる性能向上の効果として挙げられるのは、光熱費の削減や長期的なランニングコストの低減です。現代的な設備へ更新すると将来、住宅を売却する際にもリノベーションは有利になります。
リノベーションのメリット

リノベーションのメリットとして以下の2点を解説します。
- 間取り変更の自由度が高い
- デザイン性が向上する
間取り変更の自由度が高い
リノベーションを行えば、以下の要素を取り入れた間取り変更が可能です。
- 子どもの成長に合わせた部屋の分割や統合
- 在宅ワークスペースの確保
- 収納スペースの効率的な配置
- 天井高の変更や床の高さの調整
- キッチンやトイレなど水回りの位置変更
既存の住宅の状態にとらわれず、暮らし方に合わせた空間をつくり出せる点がリノベーションの魅力です。
デザイン性が向上する
リノベーションでは最新のトレンドを取り入れた、デザイン性の高い住まい作りができます。リノベーションによって可能なデザイン性を向上させるアイデアは、以下のとおりです。
- 空間に開放感や採光を加える
- 高品質な素材を使用する
- 統一感のあるカラーコーディネートを取り入れる
- 古い建物の魅力的な要素を活用する
- 個性のあるデザインを採用する
- スタイリッシュかつ機能的な収納スペースを作る
リノベーションにより洗練されたデザインの住宅を手に入れると、日常の快適性が高まり来客を迎える楽しみも増えます。
リノベーションのデメリット

リノベーションのデメリットとして以下の2点を解説します。
- コストが高くなる可能性がある
- 工期が長くなる場合がある
コストが高くなる可能性がある
リノベーションではデザイン性や機能性を重視した施工を行うため、コストが高くなる傾向があります。フルリノベーション(※1)では新築に近い費用になることもあります。高性能な断熱材や省エネ設備を導入する場合は、リノベーションに高額な初期投資が必要です。
リノベーションの内容によっては給排水管や電気配線の移設が必要になり、コストがさらに上がります。築年数の古い中古物件では壁や床の解体作業を行った際に問題が見つかり、補強のための追加工事が必要になる場合もあります。
リノベーションの予算は想定外の出費に備え、10〜20%の余裕を持たせましょう。
※1 フルリノベーション:解体から内装・設備まですべて刷新すること
工期が長くなる場合がある
標準的な全面リノベーションでは2〜3か月程度の工期が必要です。建物の構造補強や耐震工事が加わる場合、リノベーションの工期は1〜2か月ほど延長されます。
リノベーションでは以下の要素により、当初の予定よりも工期が長くなる場合もあります。
- 追加工事の発生
- 設備機器の入荷遅延
- 管理組合の承認手続きの遅延
- 雨漏りやシロアリ被害の発覚
- 繁忙期による職人確保の難航
新生活や入学・転勤などの時期とリノベーション工事が重なる場合は、特に余裕を持った計画を立てることをおすすめします。
リノベーションの進め方と流れ

リノベーションを行う際には以下の3つを把握しておくことが大切です。
- リノベーションを始める前の準備
- リノベーションの基本的なスケジュール
- リノベーションの成功のポイント
リノベーションを始める前の準備
リノベーションを始める前にまず行う準備は、予算の設定と資金計画の明確化です。以下の項目を整理し、リノベーションで重視すべき優先順位を検討しましょう。
- 水回りの改修
- 内装材の変更
- 収納スペースの確保
- 断熱性や気密性
リノベーションの実施前には、依頼する施工会社や設計事務所を比較検討することも大切です。複数の会社からポートフォリオやデザイン事例を集め、理想に近い実績を持つ施工会社を選びましょう。マンション物件でリノベーションをする場合は範囲に制限がある場合があるため、管理規約の確認も欠かせません。
一戸建ての場合はリノベーション前に構造調査や耐震診断を実施し、建物の安全性を確かめることで必要な工事が明確になります。リノベーションを滞りなく進めるために、工事期間中の仮住まいの手配や近隣への挨拶も忘れずに行いましょう。
リノベーションの基本的なスケジュール

物件購入後にリノベーションを行い、住めるようになるまでには6~8か月ほどかかることが一般的です。リノベーションの具体的なスケジュールは以下のとおりです。
- 物件購入から引渡し:1〜3か月
- 設計・デザイン決め:1〜2か月
- 見積もり・契約:2〜4週間
- 工事申請・許認可取得:2〜4週間
- 施工期間:2〜4か月
- 完了検査・引き渡し:1週間程度
マンションでは管理組合へリノベーションの申請を行い、承認を得るために2〜4週間かかる場合があります。一戸建てでは構造補強工事が必要になると、1〜2週間ほど工期が延びる可能性もあります。特殊な設備や輸入素材を使用する場合は、納期が1〜2か月追加される場合もあるため注意が必要です。
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リノベーションの成功のポイント
中古物件のリノベーションを成功させるためのポイントは、物件選びです。物件選びでは将来の資産価値を考慮し、立地や構造、築年数を注意深く確認しましょう。工事内容は、住宅の見た目よりも以下の基本性能を優先することが大切です。
- 構造に補強されているか
- 断熱性能が高いか
- 防音性能が高いか
- 設備が新しいか
リノベーション時に耐久性とメンテナンス性が高い設備や素材を選べば、初期費用が高くても長期的にはコスト削減になります。施工会社と打ち合わせた内容は必ず文書化し、曖昧な部分を残さないようにしてください。リノベーション工事開始後も定期的に現場チェックを行い、問題の早期発見に努めましょう。
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リノベーションにかかる費用

リノベーションにかかる費用について、以下の3点を解説します。
- 一戸建てのリノベーションの費用相場
- マンションのリノベーションの費用相場
- リノベーションのコストを抑えるためのポイント
一戸建てのリノベーションの費用相場
一戸建てのリノベーションの費用相場は約500万〜1,500万円です。リノベーションの工事内容別の費用相場は、以下のとおりです。
- 構造補強:100〜300万円
- 外壁・屋根の改修:200〜500万円
- 断熱・気密性向上工事:100〜300万円
- キッチン:80〜150万円
- 浴室・トイレ・洗面所:100〜200万円
- 水回り設備の交換:300〜500万円
- 間取り変更:200〜500万円
リノベーション費用の坪単価は15〜25万円/坪程度が目安です。30坪の一戸建てであれば、450〜750万円が標準的な費用です。デザイン性を重視する場合は1坪当たり25〜40万円程度まで上昇する可能性もあります。
マンションの場合の費用相場

マンションのリノベーションの費用は、100〜150万円/坪(約30〜45万円/㎡)が相場です。マンションのフルリノベーションでは、坪単価が150万円以上になることもあります。スケルトンリノベーション(※2)はさらに高額で、150〜200万円/坪が相場です。
マンションの部分的なリノベーションは、キッチンが約70〜150万円、バスルーム・トイレは約80〜150万円が相場です。マンションのリノベーションでは、給排水管や柱・梁の移動ができないなどの構造上の制約に注意しましょう。管理組合にリノベーションの承認を求める申請手続き費用が別途発生する場合もあります。
※2 スケルトンリノベーションとは、躯体だけ残してすべて作り直すことです。
リノベーションのコストを抑えるためのポイント
リノベーションのコストを抑えたい場合は以下の方法を検討できます。
- DIYできる部分は自分で行う
- 複数の業者から見積もりを取って比較する
- オフシーズンに工事依頼をする
- 既存の設備や素材を活用する
- 水回りの移動は最小限にする
- 構造壁の変更を避ける
資金面で余裕がない場合は最初に必要不可欠な部分だけを改善し、段階的にリノベーションを行う選択肢もあります。自治体が支援制度を用意している場合、積極的に活用すればリノベーションのコスト削減に役立ちます。
リノベーションに関するよくある質問

リノベーションに関するよくある質問を以下にまとめました。
- リノベーションで住宅ローンは利用できる?
- 築年数が古い物件でもリノベーションできる?
- エコを意識したリノベーションのポイントは?
リノベーションで住宅ローンは利用できる?
住宅ローン商品のなかには、中古住宅の購入資金とリノベーション費用をまとめて借りられるプランがあります。ただし、資産価値向上が見込めるリノベーション計画であることが住宅ローン審査の前提です。すでに所有している家のリノベーションには、リフォームローンやリノベーションローンが適しています。
住宅ローンは住宅金融支援機構の「リフォーム融資」や「フラット35」も選択肢として検討可能です。住宅ローン控除はリノベーション費用も対象になる可能性があるため、税制面も考慮した資金計画がおすすめです。
築年数が古い物件でもリノベーションできる?

築年数が古い物件でもリノベーションは基本的に可能ですが、以下の点に注意が必要です。
- 配管や電気設備の老朽化
- 木造住宅の白アリ被害や腐食
- 水回りの劣化
- 予想外の追加工事が発生するリスク
- 現行の耐震基準適合の可否
築年数が古い物件のリノベーションを検討する際は、事前調査費用を予算に組み込んでおきましょう。調査の結果基礎や柱・梁などの建物の構造体が健全であれば、築年数が古くてもリノベーションは可能です。
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エコを意識したリノベーションのポイントは?
エコを意識してリノベーションをすると、環境負荷の軽減や光熱費の削減が可能です。エコを意識したリノベーションの方法には以下が挙げられます。
- 壁・床・天井の断熱の強化
- LED照明や高効率給湯器、省エネ家電の導入
- 太陽光発電システムの導入
- 雨水利用システムの導入
- 通風を考慮した間取りの変更
- ハイサイドライトの設置
- 環境に優しい建材の使用
- 屋上や壁面の緑化
リノベーションでスマートホームシステム(HEMS)を導入すれば、エネルギー使用状況のリアルタイムな把握と制御が可能です。住宅の長寿命設計を心がけることも、将来的な廃棄物を減らす点でエコにつながります。
まとめ

リノベーションとは既存建物の価値を高める大規模な改修工事です。自由な間取り変更やデザイン性の向上ができる点がリノベーションのメリットです。しかし、リノベーションはコストが高い点や工期が長いデメリットもあります。
リノベーションを成功させるためには、事前準備とスケジュール管理が重要です。中古物件とリノベーションの組み合わせは、予算を抑えつつ資産価値のあるマイホームが手に入れられる優れた選択肢の一つです。新築購入以外の新たな選択肢としてリノベーションを検討しましょう。
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